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千年をとぶ鳥
黒潮は金華山沖で豊かな漁場を育てたのち、進路を東へ変え、太平洋を渡ってカナダ西海岸にたどり着きます。
その沿岸は、三陸海岸とよく似た、湾と島々が入り組む地形を持ち、沖合には世界有数の漁場が広がっています。
その地には、ファースト・ネイションズと呼ばれる先住民族が暮らしてきました。
海とともに生き、狩りや漁を営み、霧の立つ海を見つめながら日々を重ねてきた人びとです。
そこではカモメやワシが舞い、春から夏にかけては海霧が流れ込みます。
女川町と、驚くほどよく似た風景がそこにあります。
太平洋という、ひとつながりの大きな水面を挟んで、私たちは似た風景を見つめ、似た営みを続けてきました。
この計画は、その遠い対岸に暮らす人びとの生活に触れることで、女川町の海とともにある時間を、あらためて見つめ直すところから始まっています。
彼らは、トーテムポールに代表される装飾芸術によって、神話や指針、自然との関係性を、生活の場に刻み込んできました。
それは記念碑ではなく、日々の暮らしのそばに立つ「考え方のかたち」です。
私は、女川町においても、そうした時間と場所をつなぐ視点をつくれないかと考えました。
集まることを目的とした建築ではなく、
人が通りすぎ、立ち止まり、
ときに、たとえ一人だったとしても、何かを囲み、何かを望む——
そんな行為が、不意に立ち現れる余地を残した構造体として。
計画地は、女川町の海辺にある東屋です。
ただ雨や日差しをしのぐための場所である以前に、
海を前にした時間が、少しだけ緩む地点。
誰かと一緒であっても、ひとりであっても、
そこに立つことで、自然と視線や身体の向きが整い、
気づけば何かを共有しているような瞬間が訪れる。
この東屋は、そうした行動を促すのではなく、
行動が生まれてしまう状態そのものを、風景として保ち続けるための装置です。
モチーフとしたのは、海とともに生き、遠くの海を眺め続けるウミネコです。
まちの上空を旋回し、港を離れ、また戻ってくる鳥。
その視線は、日々の営みと、はるか先の時間とを、同時に見渡しています。
この場所に立つと、足元の人の気配から、港に停泊する漁船、まちの輪郭、山の稜線、空のひらけ、そして空を渡る鳥たちへと、視線が自然に持ち上がっていきます。
その延長線上には、太平洋を越えた、もうひとつの海辺の風景があります。
千年を生きるのは、人ではありません。
けれど、鳥のように時間を渡る視点を、人は一瞬、借りることができる。
この作品は、女川町の海辺に、
人の振る舞いと、流れ続ける時間とが、静かに重なり合う地点をつくり出し、
過去から未来へと続く海の時間を見渡すための、ひとつの視点をそっと置く試みです。




















