建築探訪『江之浦測候所』@神奈川県小田原市
- 園家 悠司

- 2023年4月13日
- 読了時間: 2分
「古代人の眼」というものを現代に標榜することの意義を考えてみます。
夏至と冬至の軸線を背骨とする江之浦測候所は太陽を生命そのものの比喩として眼に映るよう計画されているのではと思えるのです。夏至や冬至は祖霊が帰ってくるなど霊的なものとの交流の期間であり、クリスマスも元は復活祭だったため太陽の運行を目印に生命との繋がりが深いものだと言えるでしょう。
また、杉本氏の写真作品で水平線を切り取った「海景」が建物内に展示されており、光学ガラスの舞台に立つと写真と同じ水平線の彼方を肉眼で見ることができます。「古代人も現代人と同じものを見ていたとすれば、それは海の向こうの水平線であるだろう」と氏は説明されていますが、それと同時に私はこれは鳥の眼だなとも思うのです。空高く飛ぶ鳥と同じものを見るときはより遠くのものを見ます、その最たるものが水平線です。土器などの古代の遺物に人や動物の形を模したものがありますが、高貴な人物の装飾や神器には本来羽が生えていない人や動物に翼が生えている造形が散見されます。日本でも神様は天界(高天原)からやってきます。または遠く海の向こうから現れます。
何も知らな代人(人類)は、眼を通して世界を知ることを自身の立っている土地を俯瞰して飛ぶ鳥に象徴していったのではと想像します。塔を建て、山城を築き、飛行機を作り、宇宙まで、高く々々知っていくことが、人の習性だろうと思うのです。そう考えると「海景」は天界と地表にいる自身の視線が遠い水平線で合致する「感覚の焦点」を発見したとても優れた作品だなと改めて感嘆するのです。
江之浦測候所は地面に居ながら、空飛ぶ視線を体験できる特別な場所でした。













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